IQスコアの上昇を補うために取られた措置は、実際の認知能力にかかわらず、誰が精神遅滞と診断されるかに影響する、との研究結果

ワシントン – 過去100年にわたってIQスコアが着実に上昇してきたことはフリン効果として知られており、IQテストの規範が時間とともに陳腐化する原因になっています。 この効果に対抗するため、IQテストは15~20年ごとに、以前のIQスコアの上昇を考慮して平均スコアを100にリセットする「リノーミング」(より難しくすること)が行われています。 しかし、新しい研究によると、このようなリノーミングは意図しない結果をもたらす可能性があり、特に境界型や軽度の精神遅滞のある子どもたちの特別教育への配置の分野で、その影響が懸念されています。

コーネル大学の金谷朋恵教授、スティーブン・J・セシ博士、ウエストバージニア大学のマシュー・H・スコーリン博士は、全米の9学区の約9000の学校心理学者による特殊教育評価のIQデータを用いて、新しいテスト導入後数年間、フリン効果が精神遅滞の診断にどのように影響するのかを文書化したのです。

その結果、フリン効果によるテストの改訂が、実際の認知能力にかかわらず、どの子どもが精神遅滞と診断されるかに影響を与えていることがわかりました。 研究者によると、同じ教室にいる同じ認知能力の子どもたちは、それぞれの子どもに対して異なるテスト規範が使われただけで、異なる診断を下される可能性があるとのことです。 境界域および軽度の精神遅滞の生徒は、再標準化されたテストで再試験を受けると平均5.6点のIQを失い、同じテストで再試験を受けた同級生と比較して精神遅滞に分類される傾向が強かったとのことです。

具体的には、よく使われるIQテスト(Wechsler Intelligence Scale for ChildrenまたはWISC)をフリン効果を考慮してリノームしたところ、軽度の精神遅滞のために特別な学校プログラムを推奨される境界域(IQ 66-70)の子どもの数は、以前のテストの最後の5年間の同等のIQ域と比較して、新しいテストの最初の5年間に3倍になったそうです。

「新しいIQ規範のもとでは精神遅滞のサービスを受ける資格があるはずの生徒の中には、彼らが受けたIQテストの古い規範ではカットオフ以上のスコアを取ることができたため、サービスを受けられない者もいます」と研究者は書いています。 “また、1年前のテストでは精神遅滞のサービスを受ける資格がなかった生徒が、より新しい、より難しい規範のIQテストを受けたら、受ける資格ができるようになる。” と研究者は書いています。 これは、サービスを必要とする一部の生徒へのサービスを否定するだけでなく、特別な教育サービスを受ける資格がある子供の数が劇的に変化するため、学校システムの特別教育予算に大打撃を与えます。

教育や財政の問題以外に、フリン効果やリノームされた IQ テストは、重要な法的影響を与えることもあります。 フリン効果によるIQスコアの変動がもたらす結果は、死刑囚が精神遅滞とみなされるかどうかの判断ほど重大なものはない、と著者らは述べています。 「我々の結果は、死刑囚が検査を受けた年によって、無期懲役ではなく、死刑を宣告されるかどうかが決まることを示唆している。

研究者によれば、フリン効果は、軍事的な職業にも影響を及ぼします。

「これらの結果から導き出される主な結論は、経済的、社会的、法的な重要な決定をIQスコアに基づいて行う場合は、注意が必要であるということです」と研究者は述べています。 「特に注意すべきなのは、テストが標準化サイクルの最初か最後尾にあるときでしょう。 テストスコアは規範サイクルの最初が最も有効ですが、以前の規範サイクルの衰退期の非常に膨らんだスコアと比較されるリスクが最も高いのです」

記事。 「フリン効果と米国の政策。 精神遅滞診断によるIQスコア上昇のアメリカ社会への影響」金谷朋恵(コーネル大学)、マシュー・H・スコーリン(ウエストバージニア大学)、スティーブン・J・セシ(コーネル大学);アメリカ心理学者、58巻、10号

記者。

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